書籍

キリンの流儀

2007年06月25日(月)発売 / 税込価格:1,028 円

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プロローグ ――1001人目の営業マン

キリンビール、ぐっさん(山口智充)とくれば、新ジャンル(麦芽を原料としない発泡性の酒)ののどごし〈生〉(以下、のどごし)である。と言えるほど、ぐっさん演じるキリン営業マンのCMは、のどごし販売に多大な貢献をした。
 のどごしは2005年(以下、支障のない限り二桁表示)4月に発売されたが、数カ月ほどして、
「やらせですか」
 キリンビール株式会社の情報共有システム、キリノロジーのトピックス欄にこんな書き込みがされた。
 ぐっさんが家族連れでスーパーを訪れて、のどごしのケース買いをした後で、店長に「キリン営業部員」の名刺を渡して去ったという。書き込んだKCS(キリンコミュニケーションステージ。キリンのマーチャンダイジング専門子会社)の人間は、これは営業部あたりがぐっさんに依頼して行ったやらせではないかと、書き込みをしたわけだ。
 その書き込みをめざとく見つけた、当時首都圏地区本部長であった三宅占二キリンビール常務執行役員・国内酒類カンパニー社長(70年入社)は、マーケティング部に「やらせなのか」と問い合わせをした。ところが、返ってきた返事は、ぐっさんは、自宅付近の行きつけのスーパーだけではなく、あちこちの店に行っては、のどごしのケース買いをしては、芸能人仲間の舞台に差し入れをしているというものだった。
 このいきさつがトピックスに公開され、
「ぐっさんにそこまでやられたら、われわれも負けてはいられない」
 と、いきさつを知った営業マン、KCSの人間たちは、改めてのどごし販売に力を入れだした。

 ぐっさんにまつわる話はこれですまなかった。
 ぐっさんの思いもしなかったCM外の行動で営業部隊の士気が上がった。そこでマーケティング部長が、ぐっさんにその旨の報告を兼ねながら礼状を送った。すると、ぐっさんから一度、キリンを訪れたいと返事が来た。ぐっさんはきっと社長を表敬訪問するであろうと、マーケティング部の連中は考えていた。
 ところが、ぐっさんは意外な場所を訪れたのだ。
 首都圏流通部の、のどごし販促の決起集会の会場に突然姿を現したのだ。かつて大阪で家電量販店の営業マンをやっていたぐっさんならではの勘所を押さえた訪問の仕方であった。
 そして、営業マンたちを激励し始めた。これには営業マンやKCSの社員たちは驚きかつ歓呼の声を上げた。驚いたのもつかの間、この感激を残しておこうとぐっさんとのツーショット撮影が始まるなど、決起集会は沸きに沸いた。キリン営業部隊ののどごし営業に改めて活が入ったことは言うまでもない。
 ぐっさんはCMの中でのどごしの売り込みをしてくれた。生身のぐっさんは、さらに営業部隊の応援をしてくれた。キリンの営業はぐっさんのCMで信じられないくらいの売れ行きを経験した上で、ぐっさんから力をもらった。キリンには営業マンが1000人いるが、ぐっさんは1001人目の営業マンである。とてつもなくパワーを持った営業マンである。
 05年10月の出来事であった。

 キリンはのどごし発売から1年11カ月後の07年3月、キリンビール設立100周年の節目にビール、キリン・ザ・ゴールド(以下、ゴールド)を発売した。
 ゴールド全国発売4日前の3月16日。
「一度はビールのCMに出て、ビールを飲んでブハッーというのをやりたかった」
 10台を超すテレビカメラ、100人以上のプレスを前に、ビールCM出演の感想はと聞かれたオダギリジョーの答えに、記者会見場はどっと沸いた。
 それから一カ月後。オダギリのCMは始まった。
 ゴールドの大量の缶が舞う中から現れたオダギリは、ブハッーではなく「よしっ」と低く呟くだけだ。CMには、これから様々なバージョンが登場してくるが、初期のCMでは、オダギリはちょっとだけ顔を覗かせ、主役は、シャンパンゴールドを基調にした動き回るゴールドの缶たちであった。のどごしCMのようなあくの強さはない。むしろ都会的で洗練されたCMの仕上がりとなっている。

 泥臭いイメージがあるのどごしのCMに対して、洒落た作りのゴールドのCMは、そのまま二つの商品の違いを際だたせるものだ。それぞれキリンビール国内酒類カンパニーの営業本部が開発し、売っているビールであり、新ジャンル商品である。
 開発は営業本部のマーケティング部の商品開発研究所、売るのは営業部傘下の各地区統括本部などである。組織としては別立てであるが、両者密接な関係を取りながら、商品開発をし、販売活動を行っている。
 キリンは、商品開発の段階から営業活動を開始している。
 まずは、商品開発の現場から、ゴールドを見ていこう。続いて、販売を担当する営業現場を見ていくことにする。なお、登場する人々の所属、肩書きは取材時現在であることを断っておく(07年7月から、キリンビールはホールディングス制導入により、大幅な組織変更をする)。[文中、敬称略]

[著] 猪口修道(いのぐち・おさみ)

ジャーナリスト。1944年、東京生まれ。ゴールドがキリンビールにとって17年目のビールならば、本書は著者にとって15年振りのキリンビールの本となる。1作目は、一番搾り発売後の1992年にキリン社内の意識改革をテーマにした『アンラーニング革命』(ダイヤモンド社刊)。本書では内容を深化させ売りの仕組みを取り上げた。他に『種子ビジネスの現場』、『シルバービジネス』、『日本オラクル』など著書多数。

目次

プロローグ:1001人目の営業マン

第1章:ザ・ゴールド誕生

世界で一番おいしいビールを作りたい/「次の100年を担う定番ビール」/戦略レベル商品/開発の哲学/ビアライゼ/お前ら、1000円のビールを作るのか/チェコ産麦芽への抵抗/泡問題/4000候補のネーミング/何よりも自分が飲みたかった/最後は舌が決める

第2章:危機に打つ布石

俺たちにも成功体験が欲しいよな/新キリン宣言/なぜ、いまさら/創業100年の会社が潰れる/第二営業部隊/結果が出せない/リベート廃止/業界に先駆けて/キリンが悪いのだ/「真似る」文化を持つ会社/顧客とは最終消費者である

第3章:キリンは何が売りたいの?

金は駄目、それでも営業はやれ/竹槍で203高地を落とせ/戻るも地獄/ラガーを売りなさいよ/取引先とキャッチボールができるか/P大って何ですか?/たった一人でイトーヨーカ堂担当/やはりお店を回らないと/しからば、オーナーを攻めろ/出入り禁止/店頭最前線部隊KCS/七輪の横に置け/トピックスの女王/へっちゃらです

第4章:現場が手にした価値営業

ゼロか100かの情報戦/してやったり、花輪の行列/ひっくり返す醍醐味/草津がなめられたくないからだ/生ビールは刺身と同じ/百点満点/因縁の地・宮崎/商品の力に頼っているだけ/地元企業になれ/営業1年生の奇跡/バイトさん/ビアジェンヌの冒険/5年、5割の壁

第5章:営業の黄金律

キリン・ザ・ゴールドを見に行く/モールでケースを積む/どんどんミスしていい/スーパーの一等地、分かります?/なぜ800万ケースなのか/チームキリン/超えられるか「のどごし体験」/探り当てた金脈

第6章:現状に満足する組織にしない

日曜日の取締役会/スピード・ホールディングス/国内最強の総合酒類メーカーへ/非連続の実現

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