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あなたがスマホを見ているとき、スマホもあなたを見ている。

するどく時代を切り取る芥川賞作家が綴る、
読売新聞人気連載『スパイス』が一冊の本に!
“違和感にあふれた現代”への
ささやかな抵抗

[著]藤原智美(ふじわら・ともみ)

1955年、福岡市生まれ。フリーランスのライターを経て、90年に『王を撃て』で小説家としてデビュー。『運転士』で第107回芥川賞受賞。小説創作とともに『暴走老人!』『スマホ断食』などのノンフィクションを発表し、新聞・雑誌でのエッセー連載を行うなど、幅広く活躍する。
http://tm-fujiwara.cocolog-nifty.com

目次

まえがき しっかり立ち止まり、ぼんやり考えよう

1章
披露宴2次会、新婦がひとりスマホに見入る。

披露宴2次会、新婦がひとりスマホに見入る。
リアルに愛想笑いして、ネットで本音をぶちまける小心。
セールス電話を撃退し、いつまで残るか徒労感。
思い出の写真が人差し指でなでられ画面から逃げていく。
思い出も整理整頓しなさい。
3日の情報断食に耐えられないなら、私もりっぱなデジタルバカ。
感情暴走のブレーキが壊れました。
私のスーツケースがブラックボックスのなかに忽然と姿を消した。
機長のアナウンスに励まされ、一年が始まった。
写真は人を撮ってこそおもしろい。
そして私たちは「茶話難民」と化す。
悪玉コレステロールというけれど、善悪の判断は簡単ではないと、心で悪態をつく。
自撮りで傷つく私のナルシシズム。
大道芸、楽しめたら投げ銭ひとつがエチケット。
蛍光灯と書くだけで青白い風情がふってくる。
消えたテレビ画面に、おぼろげな自分の顔をみる。
私はスマホのなかにいます。
旅客機が自由に飛ぶ空の下、人々は生活の重みにうつむいている。
あなたがスマホを見ているとき、スマホもあなたを見ている。

2章
マドリードでもバンコクでも東京でも、同じシャツを着ているって、世界中どうかしている。

マドリードでもバンコクでも東京でも、同じシャツを着ているって、世界中どうかしている。
今朝、袖を通したジャケットは、見えない場所から脱兎のごとくやってきた。
むかしむかし、ホテルにジーンズ姿で入るとつまみ出された。長い髪もいっしょに。
スーツのデザインは、呼吸するように膨らんだり萎んだりをくり返す。ファッションって、つまり反復にすぎない。
毛皮に縄文の冬を思う。
尖ったものがみんな丸いものになっていく。街角から奇天烈ファッションが消えてなくなった。
加工、編集が自由自在のデジタル写真は世界一の嘘つきにちがいない。
犬の散歩にふさわしい正装とは?
ハイヒールは見せるためではなく、高い目線を獲得する最後の一手。
イチロー選手はスパイクシューズの重さを1グラム単位で知っているが、私はダッフルコートの重ささえ知らない。
ツバの広いあの懐かしい麦わら帽子がどこにも売ってなかった。
和服はゆるく着こなして一流と心得る。

3章
公衆電話ってなんですか、と二十歳の女子が真顔できく。

公衆電話ってなんですか、と二十歳の女子が真顔できく。
電子手帳にはスケジュールがあるが、手書きの手帳には物語がある。
雨にぬれる切なさは熱いシャワーで流しましょ。
ジャズが消えて、退屈にため息を漏らした暗がりは、寡黙な自己成長の場へと姿を変えた。
捨てられないボタンが大きな木箱にいっぱい、いまだに私も中原中也。
東京湾、小型ボートのアイスキャンディー売りがノスタルジーを1本。
イタリア人建築家デザインの炊飯器で新米を炊きあげたあの日。
オシャレを気取り皿を包んだ英字紙にアラブの戦争報道。
急須の蓋が割れると、メーカーの人が新幹線に乗って飛んできた。
なぜ植木等のスボンは細身で丈が短かったのか。
あの人の名前と住所はペンで記したい。
アイロンで縮んだ心を引きのばす。

4章
昼下がりの駅からのどかさがなくなり、傘を素振りするゴルフおやじも消えたこの頃。

昼下がりの駅からのどかさがなくなり、傘を素振りするゴルフおやじも消えたこの頃。
もう一度、むせかえる花の匂いに狂いたい中年男の「生き直し」。
若者は頭が体におくれる。中年は体が頭におくれる。そのうち頭も体もおくれる。
「逆走」という言葉なんて、20年前の広辞苑にはなかった。
死はあの世への一人だけの引っ越し。鉛筆一本持って行けやしない。
今の子は字幕さえ目で追えない、いや頭に入らない。
ラッパ飲みでむせかえる老いの悲哀。
格闘技とスイーツ作りは相性がいいらしい。
還暦男子の取り扱いには注意が必要です。
立体はかさばるから要らない、と少女はいう。
歳をとるほど写真の笑顔が減っていく。
絶叫マシンで暴走するくらい、いいじゃないか。
ときにはAIと二人きりで暮らしたい。

5章
人混みが嫌いだといいつつ、群れのなかに加わる安心感。

人混みが嫌いだといいつつ、群れのなかに加わる安心感。
夕暮れ、赤いバラは黒ずみ、木々の緑は踊りだす。
「用の美」とは、飾って美しいではなく、使って美しいこと、とはいうものの。
モノは手を入れて初めて自分の物になる。
満開の桜を気色悪いという捻くれがひどく美しい。
「パンツなし寝」のすすめ。
朝食は曲げわっぱと電子レンジの協業態勢で駆動する。
ランニングマシンの上で思索がころがる。
漂白剤で心の染みを落としたい。
ファスティングと名を変えて、断食もおしゃれな健康法になった。
食パンの端っこがどこかで私を待っている。
米飯が好きだと日本の中心で叫ぶ!
愛があればサプリメントはいらない。

あとがき

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