小林陽太郎

小林陽太郎
「性善説」の経営者

富士ゼロックスのカルチャーは性善説です。
世の中それほど甘くありませんと言われても、あえて性善説でいこう」(小林)

四六 判( 448 頁)
ISBN: 9784833420068

2012年04月10日発売 / 1,980円(税込)

[著]樺島 弘文(かばしま ひろふみ)
1956年、札幌市生まれ。東京農工大学卒業。1988年プレジデント社に入社。ビジネス誌「プレジデント」の編集長、出版部長などを務める。2002年退職して、家族で栃木県那須郡馬頭町(現那珂川町)に移住し、田舎暮らしを始める。現在、文筆家として、人物論、企業論などを執筆。インタビューした社長は100名を超える。
著書には、田舎暮らしのエッセイ『会社を辞めて田舎へGO!』(飛鳥新社)、『馬頭のカバちゃん』(日経BP社)がある。

目次はこちら(クリックで開きます)

目次

プロローグ 引退スピーチの日

山本社長は若き日、小林に辞表を出した
「僕はスーパーな存在ではない」
「ダントツ」商品を求めて
あえて「性善説」でいこう
「正しい判断」と「賢い判断」

第1章 「人間」小林陽太郎

富士写真フィルムから富士ゼロックスへ
ウォートンスクールでの二年間
若き良きアメリカ
「ひでえ会社に来たもんだ」
最も尊敬する経営者はジョー・ウィルソン
「家族付き合い」をする会社
ウィルソンの背中を追いかけて
アイロン掛けは小林本人が
洗礼名はアンソニー
ゴルフは安全・確実・有利をモットーに
プロゴルファー松井へのアドバイス
「人の話を聞くようにしなさい」

第2章 ビューティフルキャンペーンの衝撃

経済至上主義に対するアンチテーゼ
大阪万博に合わせた「紙上万博」
五分で決まったキャンペーン
真っ先に若者が反応した
ゼロックスがなくなっても、ビューティフルは残る

第3章 「一番の仕事」はTQC

「一枚10円」のコピー市場を拓く
石油ショックで、会社存亡の危機に
トップダウンによるTQCを
「半年やって駄目だったら、諦めます」
「格好つけるために、やるんじゃない」
際限のない「なぜなぜ問答」
まるで軍隊のようだ
「TQCの鬼」「朝香鐵」という人物
ダントツ商品「3500」を開発へ
縦・横のマネジメント
「3500」に残された課題
営業マンたちはTQCに強く反発した
科学的営業手法のキーとなったのは
「デミング賞への挑戦」がもたらしたもの
最も根源的な「なぜ」に答える
企業にも品質がある
厳しさを増す「QC診断」
デミング賞受審直前に「事件」
「一年延ばしたら、二度と挑戦ができなくなる」
デミング賞受賞後の「空白の五年間」
消えた日本品質管理賞へのチャレンジ

第4章 販売会社は何をもたらしたのか

販売台数シェア低下に危機感
地方の優良企業と組んで販売会社を
販売会社構想にアメリカが難色
販売会社の社長を誰にするのか
スタンダードゼロックスを一億円売った男
出るも地獄、残るも地獄
販売先第一号は愛犬病院
阿久悠と演歌の勉強中

第5章 ニューワークウェイは正しかったか

形骸化したTQC
「Why」かた「Why not」へ
「滅私奉公」ではなく「活私奉公」を
第一回「とぉくなーど」の波紋
ニューワークウェイが生んだもの
パソコン事業はなぜ、花開かなかったのか
「あなたが社長」事業の厳しい行く末
斬新な人事制度を矢継ぎ早に実施
ボランティア休暇も尻すぼみ
「よい会社」構想を世に問う
「おもしろさ」が「甘さ」を生んだ
マーケット・インからソサエティ・インへ
横浜みなとみらいでの試み

第6章 小林は後継社長たちに何を託したのか

「文脈を捉え、場を作る」リーダー
「初めて話した時、安心さを感じた」
富士ゼロックスの三つの課題
後継社長に「収益改善」の重荷が
「三倍売れ」営業の猛者が社長に
「モノ」売りから「コト」売りへ
構造改革で初のリストラ
社長とCEO
アメリカ・ゼロックスが経営危機に
「75%株主」富士写真フィルムのプレッシャー
電話で「社長を引き受けて欲しい」
意中の人物を社長にしなかった訳とは
「本格的に全部に手をつけないといけない」
地域の販売会社を完全子会社化
バランスシートには表れない「無形資産」
富士フィルム古森社長の豪腕
「ガリガリやる」会社と「おっとりしている」会社
富士ゼロックス初の技術系出身社長
技術者が社長になるメリット
技術者を営業に回す
「売ってなんぼ」の営業観を変える
ピタリの品質

第7章 「企業の社会的責任」とは何か

なぜ経済同友会に力を注いだのか
「よい会社構想」はCSRそのもの
牛尾同友会が提唱した「市場主義宣言」
小林は「パブリックマインド」を訴えた
「『市場主義宣言』を超えて」の波紋
「市場の進化」とは何か
激論!「社会派」小林vs「市場派」宮内
「論敵」宮内を社外取締役に
利益は、人間にとっての健康と同じ

第8章 「再アジア化」論と中国

日本を代表する国際派経済人として
「再アジア化」提唱の真意
中国共産党の最高理論家と「君子の交わり」
日中の「戦略的互恵関係」を提案
国際的な「人縁」を大切にする

第9章 アスペンの夢

古典を基にして「対話」を行う
リベラル・アーツ軽視が日本を駄目にした
若き小林がアスペンで受けた衝撃
モデレーターを誰にするのか
初島でトライアルコールを実施
「小林さんが言うのならやりましょう」
アスペンの目的はリーダーシップ養成
「正しい判断」を求め続ける意思

あとがき
主な取材協力者
主な参考文献
小林陽太郎氏年譜