センスメイキング

センスメイキング
本当に重要なものを見極める力 テクノロジー至上主義時代を生き抜く審美眼を磨け

本書のテーマは「人」である。もっと具体的に言えば、文化に光を当てたものであり、我々の時代の揺り戻しを描いた書籍である。今や人々は、STEM(科学・技術・工学・数学)や「ビッグデータ」からの抽象化など理系の知識一辺倒になっているため、現実を説明するほかの枠組みが絶滅寸前といってもおかしくない状況にある。世の中を数字やモデルだけで捉えるのをやめて、真実の姿として捉えるべきだ。いや、そもそも真実は1つしかないのだ。偽物の抽象化の世界を追いかけていると、人間の世界を感じ取る力を完全に失う重大な危険をはらんでいる。アルゴリズム全盛の今、我々の感性は麻痺しがちだ。
だが、目の前の課題を本気で読み解きたいのであれば、 こんな時代だからこそ、昔からある時代遅れと思えるようなやり方に回帰すべきなのである。それは、あらゆる組織で、あらゆる日々のやり取りの中で甚だしく失われてしまったもの、つまりクリティカル・シンキング(批判的思考)である。だが、そのやり方自体は、決して革命的でも最先端でもないのだ。

四六 判( 368 頁)
ISBN: 9784833423069

2018年11月15日発売 / 1,980円(税込)

[著]クリスチャン・マスビアウ(Christian Madsbjerg)
ReDアソシエーツ創業者、同社ニューヨーク支社ディレクター。 ReDは人間科学を基盤とした戦略コンサルティング会社として、文化人類学、社会学、歴史学、哲学の専門家を揃えている。マスビアウはコペンハーゲンとロンドンで哲学、政治学を専攻。ロンドン大学で修士号取得。現在、ニューヨークシティ在住。
 [翻訳]斎藤栄一郎(さいとう・えいいちろう) 
翻訳家・ライター。山梨県生まれ。早稲田大学卒。 主な訳書に『1日1つ、なしとげる』、『イーロン・マスク 未来を創る男』、『SMARTCUTS』、『ビッグデータの正体 情報の産業革命が世界のすべてを変える』(以上講談社)、『小売再生 ―リアル店舗はメディアになる』、『TIME TALENT ENERGY』(以上プレジデント社)、『フランク・ロイド・ライト最新建築ガイド』、『テレンス・コンラン MY LIFE INDESIGN』(以上エクスナレッジ『マスタースイッチ』(飛鳥新社)などがある。

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目次

はしがき 思考の終焉

序 ヒューマン・ファクター

  •  人間に起因する問題の解決策
  •  文化的知識の価値
  •  教養あるリーダーシップ
  •  本当に成功しているリーダー
  •  成功を収める条件
  •  必要なのは人文科学
  •  人間の知性とは何か

第一章 世界を理解する

  •  フォードCEOの司令塔
  •  直観で幾多の判断を巧みに下す
  •  文化への深い洞察力
  •  スターバックスの存在価値
  •  センスメイキングとは何か
  •  1.「個人」ではなく「文化」を
  •   哲学は最強の知的ツール
  •   最短距離で最も効果的に達成する手段
  •   音楽に漂う微妙な雰囲気
  •   素晴らしい芸術作品の価値
  •   相対的な関係で捉える
  •  2.単なる「薄いデータ」ではなく「厚いデータ」を
  •   才能を刺激する実感のあるデータ
  •   厚いデータを構成する材料
  •   厚いデータに支配されている我々の生活
  •   人間の本能的な文脈に立ち返る
  •  3.「動物園」ではなく「サバンナ」を
  •   現象学
  •   芸術的な遺産や歴史、しきたり
  •  4.「生産」ではなく「創造性」を
  •   非線形の問題解決法
  •   答え探しの術
  •   創造性の真の姿
  •  5.「GPS」ではなく「北極星」を
  •   ビッグデータ時代のリーダーシップ
  •   本当に重要なものを見極める力

第二章 シリコンバレーという心理状態

  •  シリコンバレーのビジョン
  •  「シリコンバレー」的考え方
  •  単に製品を売るのではなく、「市場」を破壊する
  •  QS(自己定量化)のムーブメント
  •  ビッグデータの肝
  •  “ビッグデータ教”
  •  事実は常に文脈の中に存在する
  •  摩擦ゼロの技術をよしとする考え方
  •  「フィルター・バブル」

第三章 「個人」ではなく「文化」を

  •  方向感の定まらないパニック状態
  •  恐怖や不安を切り抜けるための道筋
  •  我々が人間たるゆえん
  •  「存在を理解する基礎となるもの」
  •  高級車リンカーンの香り
  •  リンカーンブランドの歴史
  •  「存在を理解するための基盤」に立って考える
  •  「自動車生態系」
  •  「上質な体験」とは何かを見極める
  •  「意味の連なり」
  •  不透明感が漂う自動運転技術
  •  個ではなく、全体を見る
  •  才能ある詩人が脳損傷で失ったもの
  •  脳はコンピュータと同じとみなす考え方
  •  タマーレの作り方
  •  脳が処理していたもの
  •  文化的な関わりと熟達への段階
  •  身体の記憶で動く
  •  「そこにないものを演奏する」

第四章 単なる「薄いデータ」ではなく「厚いデータ」を

  •  三人の為替トレーダーの話
  •  ポンドの空売りが一番儲かる
  •  ジョージ・ソロスが儲けられたわけ
  •  「反証可能性」という概念
  •  ソロスが使う物事を「理解する方法」
  •  四つのタイプの知識
  •  知識とパターン認識の融合
  •  数値化できないデータには、まったく歯が立たない
  •  ヘルシンキの街に繰り出してみる
  •  本物の会話を通じて感じ取る
  •  文芸経済学への回帰
  •  反騰と暴落
  •  自らの洞察力を駆使して行動を起こす
  •  傍観せず戦いに飛び込む
  •  大気圏から成層圏へ
  •  新しい言語の勉強
  •  常識の力
  •  ソロスのアドバイス
  •  最高の成績を叩き出す商品トレーダー
  •  想定外の事態への対処法
  •  デカルト流の予測の限界

第五章 「動物園」ではなく「サバンナ」を

  •  フッサールの「カッコに入れる」行為
  •  センスメイキングの応用法
  •  「アイデア」としてのアプリコット・カクテル
  •  「動物園」からの脱却
  •  「正しい」と「真実」の解釈法
  •  時間という経験
  •  現象学を真っ先に活用すべし
  •  生命保険・個人年金企業の「説話分析」
  •  老いとはどういう経験なのか
  •  実在的危機を感じる人々
  •  老いという現象の研究は、ビジネスチャンスの宝庫である
  •  解約率が八〇%も減少
  •  ハイデガーと気分
  •  人々にとって「料理」とは何か
  •  「食」に関わる行為や習慣
  •  スーパーマーケットは、舞台装置
  •  新たなビジネスのアイデア
  •  共感力
  •  共感の三つの段階
  •  六つのセンスメイキング応用例
  •   一.記号とシンボル
  •   二.メンタルモデル
  •   三.社会システムに関するニクラス・ルーマンの理論
  •   四.アーヴィング・ゴッフマンの舞台上での印象操作理論
  •   五.互酬理論
  •   六.ウィトゲンシュタインの言語論
  •  我々を「通して」出てくる創造性

第六章 「生産」ではなく「創造性」を

  •  「見ること」をめぐる二つの物語
  •  二〇世紀最大の詩人
  •  フォード独自のビジョン
  •  来たるべき未来を見据えていた男
  •  センスメイキングの核をなす創造性
  •  恵みか意志か
  •  「我々を通して」出てくるもの
  •  意思
  •  デザイン思考―でたらめセンセーションの構造―
  •   一.社会的文脈のないイノベーション
  •   二.知らぬが仏
  •   三.消費者の心を動かせ
  •   四.あらゆる苦痛を取り除く
  •   五.温かみのある言葉でカモフラージュ
  •   六.クルマはビジネススクールの駐車場に返しておく
  •  マーティン流の問題解決法
  •  文脈を正面から受け入れる
  •  ビジネス、文学、芸術の分野での例
  •  説得力ある洞察
  •  情報の「濾過」機能
  •  「システム1」の思考モード
  •  一五〇年の伝統を誇るスイスの時計メーカー
  •  突然のひらめき
  •  大胆なアイデアの生まれ方
  •  印象を自らの中に「取り込む」
  •  コペンハーゲン郊外の住宅建設プロジェクト
  •  現地が持つ実用性と美の両面の可能性
  •  ハンガリーの歴史の一端
  •  ひらめきの時間が恵み

第七章 「GPS」ではなく「北極星」を

  •  センスメイキングの達人
  •  一.シーラ・ヒーン教室と一体になる
  •   自己防衛に死角がある
  •   多種多様なデータを処理
  •   フィードバックのやり方
  •   交渉のスキルを教える
  •  二.マルグレーテ・ベステアールールの行間を読む
  •   一流シェフとレシピの関係
  •   「虚飾の隔たり」
  •   人々の暮らしや不安に寄り添う
  •  三.クリス・ボス敵対する世界を理解する
  •   ビデオに込められたメッセージ
  •   アクティブリスニング
  •   明解な真実を表現する
  •   名誉の盾で守られる
  •   交渉は感情制御能力
  •   目利きになる
  •   『ああ、そこは補習席よ』
  •   会話にそれとなく現れるプラスとマイナス
  •   この世を理解する方法
  •   センスメイキングの錬金術
  •   理想のワイン
  •   老人だからこそ賢い
  •   気遣い
  •   関心があるからこそ
  •   映画『マネーボール』のワイン版
  •   アルゴリズムでは拾えない奥深いデータ
  •   意味のある違い
  •   ハイデガーの言う「技術」
  •   リスクをとることが絶対に大切

第八章 人は何のために存在するのか

  •  介護の行方
  •  ランドールと午後三時の解決策
  •  顔の見える介護の方が「安上がり」
  •  認知症介護の「新しい効率性」
  •  呪縛からの解放
  •  「人は何のために存在するのか」
  •  実践に役立つ有益な道具
  •  競争力の源泉
  •  何ものも「すべて」を変えることなどできない
  •  関心を寄せ、気遣いをするために人は存在する

出典