食の歴史

食の歴史
人類はこれまで何を食べてきたのか

「人類の幸福の源は、食にある」とジャック・アタリ氏はいいます。

衣食住は、昔から人の生活に欠かせない3要素です。地球の誕生から過去、現在、未来に至るまで、人類はどのように食べるという行為と関わってきたのか。アタリ氏は、これらを綿密な資料から分析します。

特に食には、生命を維持する以上の役割があり、政治・経済・文化・産業・性・哲学・環境・芸術などあらゆることが結びついてきました歴史があると指摘するのです。

たとえば、イタリアやフランスは食文化の宝庫であり、フランス王ルイ14世などは料理を戦略的な外交の手段として活用してきました。また、高級ホテルや加工食品の歴史も食なしには語ることができません。
同時に現在のアメリカの繁栄にも食が大きく関連しています。コーンフレークやファストフードは、いかに人を効率よく働かせるかという目的で作られたものです。これら栄養学がアメリカの国家戦略に強く影響しています。

富裕層は何を食べているのかといった世俗的な話題から貧困層の食事は何か、世界の飢餓はどうして起こるのかなど、世界的な課題に関しても鋭い分析は留まりません。

2050年に世界の人口が50億に達し、AI社会が到来しているとすれば、人類は何を食べていくのか。アタリ氏は、昆虫食に関する未来も予言するのです。

実は、アタリ氏は自称健康オタクで、食べる物に関して最大限の注意を払っています。現在、78歳にして輝かしい知性を放ち続けるために必要な巻末の「食の科学的基礎知識」は必読です。

四六 判( 392 頁)
ISBN: 9784833423618

2020年02月28日発売 / 2,970円(税込)

[著]ジャック・アタリ(Jacques Attali)
1943年アルジェリア生まれ。
フランス国立行政学院(ENA)卒業、81年フランソワ・ミッテラン大統領顧問、91年欧州復興開発銀行の初代総裁などの、要職を歴任。政治・経済・文化に精通することから、ソ連の崩壊、金融危機の勃発やテロの脅威などを予測し、2016年の米大統領選挙におけるトランプの勝利など的中させた。林昌宏氏の翻訳で、『2030年ジャック・アタリの未来予測』(小社刊)、『新世界秩序』『21世紀の歴史』、『金融危機後の世界』、『国家債務危機─ソブリン・クライシスに、いかに対処すべきか?』、『危機とサバイバルー21世紀を生き抜くための〈7つの原則〉』(いずれも作品社)、『アタリの文明論講義:未来は予測できるか』(筑摩書房)など、著書は多数ある。

[翻訳]林 昌宏(はやし・まさひろ)
1965年名古屋市生まれ。翻訳家。
立命館大学経済学部卒業。訳書にジャック・アタリ『2030年ジャック・アタリの未来予測』『海の歴史』(小社刊)、『21世紀の歴史』、ダニエル・コーエン『経済と人類の1万年史から、21世紀世界を考える』、ボリス・シリュルニク『憎むのでもなく、許すのでもなく』他多数。

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目次

はじめに

第一章さまよい歩きながら暮らす

 動物もヒトもさまよい歩きながら食べる

 不満ながらも生で食べるヒトの仲間たち

 食をめぐる火の利用と会話

 最初のヨーロッパ人、ネアンデルタール人は肉食人種だったのか

 食を語り合うホモ・サピエンス

 地球全体を食らう

第二章 自然を食らうために自然を手なずける

 中東では、栽培するために定住する

 気象学、天文学、占星術によって収穫を占う

 ヨーロッパでは、カニバリズムが横行する

 小麦でなく米をつくる地域

 メソポタミアで始まった穀物の栽培と帝国の出現

 宴は権力者の語り場

 中国で生まれた食餌療法

 日本と朝鮮では、米は特別な存在

 インドで始まった菜食主義

 人肉食という独特の風習が残るメソアメリカ帝国

 エジプト文字からわかる「食は会話なり」

 自然の恵みにより帝国の誕生が遅れるアフリカ

 世界中で横行する人肉食

 旧約聖書を食べるユダヤ教徒

 統治のために会食するギリシア人

 豊穣の地で暮らすエトルリア人

 支配するために饗宴を開くローマ人

 ローマ人の食事

第三章 ヨーロッパの食文化の誕生と栄光(一世紀から一七世紀中ごろまで)

 神を食べるキリスト教徒

 中世前期の謝肉祭と四旬節

 食は神の恩恵だと感謝するイスラーム教徒

 中世末期の香辛料と失われた楽園

 旅先での食事の場

 イタリア料理の躍進(一四世紀から一六世紀)

 フランスの特異性

 君臨するフランス(一七世紀)

 アメリカ大陸発の食革命:ジャガイモ、トウモロコシ、チョコレート

第四章 フランスの食の栄光と飢饉(一七世紀中ごろから一八世紀まで)

 フランス的特異性の原型は太陽王の食卓

 フランス革命を告げる「中産階級の料理」

 アルコールの代わりにソーダ水を飲む

 そのときアジアでは:饗宴と飢饉

 イギリス人よりも栄養状態がよかったアメリカの開拓者

 パリにレストランができる:知識人のたまり場

 飢饉、反乱、フランス革命

 革命と中産階級の会食

 美食外交

第五章 超高級ホテルの美食術と加工食品(一九世紀)

 食によって始まった工業化

 肥料と低温殺菌法

 子供を養う

 ソーダ水と自動販売機がアメリカに上陸

 リッツとエスコフィエによる高級ホテル

 ヨーロッパの大衆食、パンとジャガイモ

 世界各地の固有の食文化

第六章 食産業を支える栄養学(二〇世紀)

 栄養学というアメリカ資本主義の策略

 カロリーとコーンフレーク

 資本主義の加速によって減る食事の機会

 味は二の次

 シカゴの食肉処理場で始まった流れ作業

 食の大量生産

 素早く食べる、ファストフード

 世界各地に出現するアメリカ料理

 二〇世紀の飢饉と地政学

 飢餓の撲滅

 勢力を増す世界の食品業界

 危ない砂糖

 粗悪品の過食

 砂糖に対する消費者の不毛な戦い

 減る会食、増す食欲

 孤軍奮闘するフランス:「ヌーヴェル・キュイジーヌ(新しい料理)」

第七章 富裕層、貧困層、世界の飢餓(現在)

 農業と食品業界の状況

 富裕層さえも食卓から離れる

 中間層の食文化は混合型

 最貧層は、飢餓あるいは体に悪い食物により命を落とす

 家族で食卓を囲む機会の喪失

 ベビーフード

 学校の給食

 職場での食

 世界中に広がるヴィーガニズム〔完全菜食主義〕

 宗教食

 昆虫食

 世界で最も人気のあるイタリア料理

 フランスの特異性は健在

 糖分、肥満、死

 健康に悪いのは糖分だけでない

 野菜、肉、魚は、過剰生産

 食による温室効果ガスの過剰排出

 破壊される土壌

 失われる生物多様性

 秘中の秘

 食に対する人々の意識

 食に対する若者の態度

第八章 昆虫、ロボット、人間(三〇年後の世界)

 食糧需要を占う

 九〇億人を養えるのか

 これまで以上に品質のよいものを少量食べる超富裕層

 今後の食文化の傾向

 減る肉と魚の消費量

 菜食主義者になるのか

 昆虫食の推進

 砂糖の消費量を減らす

 治癒のために食べる

 自然を模倣する

 究極のカニバリズム

第九章 監視された沈黙のなかでの個食

 料理するのをやめる

 ノマドの粉末食

 個食に向けて

 監視型社会

 それでも不安は解消されず、最悪の事態を迎える

第十章 食べることは重要なのか

 農業の担い手は正しい知識をもつ小規模農家

 世界の食品会社に対する規制を大幅に強化する

 全員にとって最善の食餌療法:食の利他主義

 少肉多菜

 少糖

 地産地消

 ゆっくり食べる

 自分たちの食を知る

 食育

 節食

 ポジティブな暮らしと地球のための「ポジティブな料理」

 会話の弾む食卓という喜びを見出す

付属文書 食の科学的な基礎知識

 味覚

 ヒトに必要な食

 腸

 食生活が脳におよぼす影響

 何が食欲に影響をおよぼすのか

 国際的な環境保全における食

謝辞

訳者あとがき