[著]鈴木 敏文(すずき・としふみ)
セブン&アイ・ホールディングス名誉顧問
1932年長野県生まれ。中央大学経済学部卒業後、東京出版販売(現トーハン)を経て63年イトーヨーカ堂入社。73年セブン-イレブン・ジャパンを創設し78年社長に就任。92年イトーヨーカ堂社長、2003年イトーヨーカ堂およびセブン-イレブン・ジャパン会長兼CEOに就任。05年セブン&アイ・ホールディングスを設立し、会長兼CEOに就任。16年から現職。著書『わがセブン秘録』など多数。
[取材・構成]勝見 明(かつみ・あきら)
ジャーナリスト。1952年、神奈川県生まれ。東京大学教養学部中退後、フリージャーナリストとして経済・経営分野を中心に執筆を続ける。著書に『鈴木敏文の「統計心理学」』ほか、『共感経営』(野中郁次郎氏との共著)など。
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イントロのようなまえがき モノ消費からコト消費の時代へ
なぜ、セブン‐イレブンの日販は他チェーンより一五万円も高いのか
「カスタマー・エクスペリエンス」とはコト消費
「仮説・検証」によりコト的な価値を提供する
「真冬の冷やし中華」が売れるわけ
第1章モノではなく、コト(体験価値)を売る時代へ
1 コロナ禍で顧客体験がより重要性を増した
到来する「消費縮小社会」
キーワードは「消費のレジャー化」&「家族ぐるみ」
コンビニも「脱・時間節約型消費」に対応する必要
売り手と買い手の関係は不可逆的に次のステージに向かう
2 メリハリ消費、ごほうび消費は典型的なCX型消費
現代の消費者に広がる「損したくない心理」
消費者が求めるのは「消費を正当化する理由」
3 同じものごとでも提示の仕方で売れ方が変わる
受けるのは「二〇%引き」より「現金下取りセール」
「真冬の冷やし中華」はなぜ売れるのか
4 CX重視で生まれたセブン‐イレブンの実験店舗
セブン‐イレブンの「ストア・イノベーション・プロジェクト」
「女子会」や「家飲み」に対応した売り場づくり
「ワイガヤ」で衆知を集めて売り場に活かす
かつてないセブン‐イレブンの誕生
5 なぜ、CX(顧客体験価値)が重要になってきたのか?
背景にあるのは消費の飽和
「お腹いっぱい」の人は何を食べるか
6 価格と価値の両にらみ
半分にカットした割高の大根が売れる理由
価値のないものはタダでもいらない
7 セブンプレミアムはなぜ、年間一兆四〇〇〇億円近くも売れるのか
常識を破った「上質感」と「製造者名の明記」
顧客体験価値の五つのタイプ
8 顧客体験価値を伝えるにはデザインも重要になる
ユニクロ店舗のSENSE(感覚的経験価値)
セブン‐イレブンは「感覚的経験価値(SENSE)」をいかに高めたか
9 「売る力」とは顧客に満足してもらう体験価値を提供できる力
「あなたにとって、セブン‐イレブンとは?」
10 セブン‐イレブンは創業以来、顧客体験価値を提供してきた
おにぎりの販売は「新しい習慣」を生み出した
モノ売りで倒産したアメリカのセブン‐イレブンとの違い
11 顧客体験価値にとって大切なのは売り手のフィロソフィ
Francfrancには、なぜ、便座カバーが置いてないのか
「変わらない視点」と「新しいネタ」
第2章CX経営にはどんな発想法が必要なのか
1 常に顧客を起点に発想する
「お客様のために」ではなく「お客様の立場で」考える
2 顧客起点の発想はあらゆる分野で求められる
行動展示で顧客体験価値を提供して復活した旭山動物園
動物園を「お客様の立場で」を見直して気づいた衝撃の事実
3 「川モデル」ではなく、「井戸モデル」で考える
花の売り手が花をもらって初めて問題点に気づく
売り手の「まとめ売り」を買い手は「必要以上に買わされる」と感じる
誰もが売り手であると同時に買い手でもある
4 真の競争相手は「絶えず変化する顧客ニーズ」と位置づける
横を見ずに目の前にいる顧客に目を向ける
顧客体験価値は「絶対価値」の追求により実現する
5 顧客起点で新たな「事業連鎖」をつくっていく
「異業種間競争」の時代
顧客を起点にして既存の活動範囲や業界の境界を超えて発想する
6 経営の「動体視力」を鍛える
おいしいもの」は「飽きるもの」でもある
7 「二匹目のドジョウ」をすくってはならない
脱・モノマネ思考
「他店見学をしてはならない」
CXとEXは両輪をなす
8 ブレイクスルー思考で未来を起点に発想する
「過去の延長線上」ではなく「未来の可能性」に目を向ける
未来の可能性は過去の論理では否定できない
高級食パンブームの草分けになった「金の食パン」
9 「成功の復讐」に縛られてはならない
過去の経験のフィルターがかかると変化が見えなくなる
未来創造は市場創造、顧客創造につながる
第3章顧客の求める体験価値をどのように生み出すのか
1 予定調和を壊す
「創造性とは、ものごとを結びつけることである」
「おやっ」を見つけるには「気づき」が大切
「ひまわりがブームになっているときには、たんぽぽの種をまこう」
2 「上質さ」×「手軽さ」の空白地帯を見つける
二律背反を両立させるトレードオフ戦略
市場の「空白地帯」には顧客の潜在的ニーズが埋まっている
イベントで使うおしゃれな花を家庭用に
市場の「不毛地帯」に陥ってはならない
3 仮説力を鍛える① ?疑問を発することが出発点
世の中でいわれていることを鵜呑みにせず、疑問を発する
仮説は「勉強」からは生まれない
4 仮説力を鍛える② ?「先行情報」を見つける
情報を釣る「関心のフック」
情報は「一本釣り」より「はえ縄式」で収集する
5 仮説力を鍛える③ ?ミクロとマクロの両方の目をもつ
木を見て森を見、森を見て木を見る
ミクロの直観力とマクロの構想力をもつ
6 仮説力を鍛える④ ?「川モデル」ではなく「井戸モデル」で考える
普通の生活感覚を大切にする
自分たちが商売の「主体になってはいけない」
7 仮説力を鍛える⑤ ?「素人の発想」を大切にする
素人の目線で素朴な疑問を解決すると新しい価値が生まれる
8 ものごとを「再定義」することで新しい価値を生み出す
定義は固定的なものではなく、一つだけとは限らない
第4章カスタマージャーニーに沿った戦略を考える
1 仮説を立てるとはカスタマージャーニーを想定すること
「顧客の通り道」をつくり出す
2 売り場という「舞台(ステージ)」で「物語」を生み出す
顧客体験価値の源泉は「物語性」にある
地域密着の個店主義が独自の「物語性」を生む
ポストコロナ社会で重要性が増す個店主義
3 キュレーション戦略~選択と絞り込みで新しい価値を生み出す
キュレーションとは
駅ビルのルミネはキュレーションの成功例
キュレーションで重要なのは新たなコンセプトによる再定義
スーパーでも実行したキュレーション発想の品揃え
居心地のよい「セミラティス構造」の空間
4 演出力で「売る力」を高める
品の種類を絞り込むほど顧客は選択に迷わない
5 「高・中・低」の価格帯があると「中」が選ばれる
提示のされ方で選択肢が変わるフレーミング効果
顧客心理の「極端回避性」
6 CX時代には「お客様に近づく」ための「接客」が重要
「接客」こそが自己差別化の重要な要素になる
接客は「最後の一押し」
接客の基本は顧客への共感
人間は自分の考えに共感してもらえることがいちばんうれしい
7 オムニチャネル(ネットとリアルの融合)は流通の最終形
現代は「消費者による生活の合理化」の時代
自主マーチャンダイジングができる売り手が勝ち残る
8 データの向こうに新しい需要を発見する
販売データの奥にある買い手の心理を読む
ビッグデータからは仮説は導き出せない
構成担当者によるあとがき
常に「お客様」を分母にして判断する