日本型PMIの方法論

日本型PMIの方法論
中堅・中小企業を成長させるポストM&Aのプロセス

SOLDOUT

M&Aは、「成約」がゴールではない。
異なる企業同士が、当初目論んでいた成果を享受してはじめて、「成功」といえるのである。

日本M&Aセンターで、中堅・中小企業のためのポストM&Aのプロセス=PMIを手がけてきた著者が、M&Aを成功に導くPMIの考え方と手法を、理論と経験をもとに、豊富な図版を交えつつ解説。売り手企業と買い手企業が思いを共有し、シナジー効果を実現するためには、何が必要か──。
PMIコンサルティングの現場ですぐに活用できるツールとして、事例ごとの「帳票例」も掲載。M&Aを考える、M&Aをしたもののシナジー効果に悩む経営者、PMI担当者に向けた極めて実務的な指南書。
これまでのPMIについての書籍は、海外企業あるいは大企業同士のM&Aにおける取り組み事例が中心となっていたなかで、日本における中堅・中小企業のPMIに特化した初の本でもある。

A5 判( 216 頁)
ISBN: 9784833451406

2019年03月01日発売 / 1,650円(税込)

[著]竹林 信幸(たけばやし・のぶゆき)

日本CGパートナーズ取締役
1970年生まれ。慶應義塾大学法学部政治学科卒業。大手生命保険会社を経て、国内外コンサルティング会社にて経営コンサルティング業務に従事。M&A支援、企業再生、経営者向けのコーチングなど、豊富なコンサルティング経験を有する。日本M&Aセンター入社後、PMI支援室の正式発足時に参画し、日本における中堅・中小企業向けのPMIの体系構築、パッケージ化したサービスの導入に尽力。「シナジー効果を享受するまでがM&A」との信念に基づき、日本M&AセンターのPMI案件のすべてに携わる。2018年、日本M&Aセンターの子会社である日本CGパートナーズの設立に伴い、取締役就任。経営会議でのファシリテーションなど、譲渡企業と譲受企業の意思決定の緩衝材となる役割も担っている。

株式会社日本CGパートナーズ
日本M&Aセンターの100%出資で、2018年4月に設立。PMIを単なる「M&A後の経営統合」ではなく、「資本提携後に売り手企業と買い手企業がともに成長する過程(Collaborative Growth Process)」と再定義し、売り手企業、買い手企業の双方をサポート。M&A後に両社が成長を実現するために必要となる会計領域、ビジネス領域のコンサルティング業務を行う。

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目次

はじめに

第1章 PMIの定義 

 1.PMIとは何か

 M&Aの3つのプロセス/成約は「ゴール」ではなく「スタート」/M&Aをした後にどうするか

 2.PMIはどこまでやればいいのか

 PMIは経営の「総合科目」/「100日プラン」/で、誰がやるの?

 3.PMIの専任者はいない

 フルパッケージのPMI/経営を担う人材は不足している

 4.「日本型PMI」のコンセプト

 オーガニックでどこまで成長するか/売り手企業にも成長戦略が必要/CGP(コラボレイティブ・グロース・プロセス)/増えてきた「成長戦略型M&A」/中堅・中小企業への支援体制

第1章のまとめ

第2章 いま求められるPMI 

 1.日本における中堅・中小企業の現状

 「日本型PMI」の考え方/中堅・中小企業で留意すべきこと/ヒト①:「強力なリーダーシップ」の功罪/ヒト②:主体的な人材の不足/ヒト③:ノウハウの属人化/モノ①:設備投資は滅多に行われない/モノ②:取引先とのパワーバランス/カネ①:経理担当は社長の奥様/カネ②:高額な親族報酬と従業員給与の長期的な停滞/カネ③:決算内容の理解と予算管理の実情/事業インフラ①:中小企業は社長がルールブック/事業インフラ②:制度やルールの未整備

 2.売り手企業と買い手企業の関心領域の違い

 売り手企業の3分の1がM&A後に不安/PMIは「相手の立場」に立つことから

 3.アメリカ企業におけるPMI 

 M&A先進国にPMIがない?/日米で大きく違う「M&A観」/従業員にとってM&Aは昇給のチャンス

 4.いま日本で「売れている」PMIメニュー

 ニーズに即してできた「PMIパック」/現実的、かつ効率的なメニュー

第2章のまとめ

第3章 PMIは「人」で決まる

 1.「PMI巧者」の共通点

 「誰がやるか」がPMIの成否を決める/PMI巧者の3つの共通点/共通点①:お金の使い方を知っている人/支出を減らすのでなく、あえて増やす/共通点②:フットワークが軽い人/情報の「非対称性」に気をつける/共通点③:要求を遠慮なく伝え、明確に求める/現場の従業員に、繰り返し聞く

 2.PMIに必要な知識とスキル

 専門家チームを組成する/「角」の見極め力をつける/コミュニケーションスキルを磨く/愚痴と正論が交わることはない/「センス」とは「見識」である

第3章のまとめ

第4章 「日本型PMI」を実践する

マインドセット編

 1.「違い=問題」ではない

 中堅・中小企業は「自然体」なだけ/「当たり前」の強要が失敗を招く

 2.角を矯めて牛を殺す

 過剰な管理で現場のモチベーションが低下/「角を矯めて牛を殺し」てはいけない/過度のリスペクトは禁物

 3.企業文化の融合はPMIの必須要件なのか

 企業文化とPMI/企業文化とは何か/文化を変えることはできるのか

 4.PMIとダイバーシティ

 PMIのヒントは“ダイバーシティ”にあり/文化を融合させるのではなく、擦り合わせる/「AorB」ではなく、「C=NewOne」をつくる/新しい人事制度で売り手企業が活性化/常に上位概念で語り合う/対峙するのではなく、同じ方向を向く

第4章:マインドセット編のまとめ

実践編

 1.売り手企業の現状を把握する

 まずは「ビジネスを通常どおり流す」を目標に/赤字案件の受注をやめて、売上と利益が激減/カリスマ社長が抜けた穴は大きい

 2.キーパーソンへのインタビュー

 インタビューで、ブラックボックスを可視化/主体性を引き出すための方法論/売り手企業は買い手企業に警戒心を抱いている/最初に「人事面談ではない」と明言/質問で相手を誘導してはいけない/複数の人に聞いて、問題を立体的に把握/情報把握力はインタビュースキルに比例する

 3.現状を表現するツール

 引き出した情報を整理する/フォーマットを活用して図解する/「業務フロー」を見える化する/「引継ぎ業務リスト」の作成/ぴったりはまる「ピース」はない/社内の“火薬庫”を把握する/「人物相関図」の活用方法

 4.取り組みテーマに優先順位をつける

 PMIにおいて、より現実的な解を探す/急がば回れで、長期戦を前提に/テーマを3つに分類する/優先順位は「実務」⇒「組織」⇒「感情」

 5.クイックヒット施策の重要性

 「小さな課題群」で成果を実感/どのようなクイックヒットが有効か/クイックヒットは、停滞企業ほど功を奏する

第4章:実践編のまとめ

第5章 PMIの準備

 1.ポストはプレ、プレはポスト

 なぜ、計画どおりに進まないのか/後工程の品質は前工程で決まる/M&Aの実務担当者はPMIを考えられない?/「ポストはプレ、プレはポスト」

 2.PMIのためのデューデリジェンス

 プレ段階で実施したい「PMIデューデリジェンス」/PMIデューデリジェンスにおける確認事項/経営管理の状況でPMIのプランが変わる/売り手企業に「将来の社長候補」はいるのか

 3.PMIには予算が必要

 必要な施策と費用に目処をつける/役員報酬をPMIの「原資」に/成長につながる投資は積極的に/投資すべきは「ヒト」の領域

 4.思いを引き継ぐ「成約式」

 セレモニーで信頼関係が変わる/売り手企業と買い手企業が思いを共有/効果的な成約式のための「準備」

第5章のまとめ

第6章 PMIの事例と帳票

事例I:シナジー創出の前段階で連結決算と内部統制を整備

 I-1:背景の理解と課題/I-2:取り組みテーマの検討/I-3:プロジェクトスケジュール

事例II:経営管理についての課題にすぐに着手して仕組みを構築

 II-1:試算表出力の早期化/II-2:KPIの設計に向けた指標の体系化/II-3:KPI設定のためのディスカッション結果

事例III:引継ぎ業務リストと業務フローで経営課題を見える化

 III-1:業務フロー分析/III-2:情報フロー分析/III-3:引継ぎリスト/業務分析/III-4:引継ぎリスト/時間分析

事例IV:的確な現状分析を実施することで適切な打ち手を検討

 IV-1:業務フロー分析/IV-2:SWOT分析/IV-3:今後の経営方針についての論点/IV-4:経営者の資質についての考察

おわりに