環境の思想

環境の思想
「足るを知る」生き方のススメ

環境問題は世界の危機。それを打開する知恵が、わたしたちが暮らす「日本」の中にあるとしたら?福沢諭吉が、夏目漱石が向きあい、悩み、乗り越えてきた「西洋の文明」と「日本の伝統」の融合という問題。そこにこそ、解決の大きな鍵がある。日本人の間に伝えられてきた「自然とともに暮らす知恵」を再検証し、押し寄せる西洋文明を前に「日本とは何か」を考えた明治の賢人たちの足跡を学び、今、日本各地で実践されている「伝統的知恵を生かしたまちづくり」を見る――。長年、環境問題に対する日本独自の解決策を研究し続けてきた著者が示す、日本だからこそできる、「CO2 25%削減」へのヒント。

本書はカーボンオフセット商品です(※)
※一般社団法人日本カーボンオフセットの協力を得て、本書の制作販売に関わるCO2排出量の全量をオフセットしています。

四六 判( 272 頁)
ISBN: 9784833491174

2010年01月25日発売 / 1,650円(税込)

[著]加藤三郎(かとう・さぶろう)

1939年東京生まれ。東京大学工学系大学院卒業。厚生省入省。環境庁設立に伴い、主に同庁にて公害、環境行政を担当。90年同庁地球環境部初代部長に就任。93年退官。現在NPO法人環境文明21共同代表。環境文明研究所代表取締役所長。早稲田大学環境総合研究センター顧問教授。川崎市国際環境施策参与。プレジデント社主催「環境フォト・コンテスト」審査委員長。主な著書『環境と文明の明日』(プレジデント社)、『環境力』(ごま書房)、『環境の世紀』(毎日新聞社)ほか。

[著]藤村コノヱ(ふじむら・このえ)

1953年大分県生まれ。千葉大学卒業。小学校教師、環境コンサルタント等を経て、90年環境教育専門のシンクタンクを設立、環境教育のパイオニアとして活動。その一方、NPO法人環境文明21の共同代表として活動。「環境教育推進法」の立法化並びに改正に先頭に立って活動。東京工業大学大学院博士課程にて環境NPO論を研究。著書『環境学習実践マニュアル』国土社、共著『持続可能な社会のための環境学習』(共著者・木俣美樹男)培風館。

[著]伊藤寿子(いとう・としこ)

社団法人環境情報科学センター(伊那市高遠在住)

[著]成田研一(なりた・けんいち)

奈良県立大学非常勤講師、NPO法人環境文明21関西グループ

[著]十文字修(じゅうもんじ・おさむ)

NPO法人循環の島研究室代表理事

[著]松尾和光(まつお・かずみつ)

静岡県地球温暖化防止活動推進センター(特定非営利活動法人アースライフネットワーク)

[著]大西 悟(おおにし・さとる)

NPO法人環境文明21研究員

[著]図師田聡子(ずしでん・さとこ)

NPO法人環境文明21研究員

目次はこちら(クリックで開きます)

目次

はじめに

序章 激動の世を生き抜く知恵

一 かつてない危機に見舞われる世界と日本
二 「ピンチをチャンスに変える」好機とする
三 今の苦境を脱け出す「知恵」とは
四 欧米の知恵の限界を突破する現代版「和魂洋才」

第一部 日本の伝統社会が保持していた持続性の知恵

第一章 八項目にまとめられる日本の知恵

一 モノへの執着より精神的な豊かさや心の平安を重視していた(モノより心)
二 自然と同化し、自然との共生の精神を基盤としていた(自然との共生)
三 「足るを知る」自足の心と、「もったいない」精神をもっていた(足るを知る)
四 輪廻、循環思想が根づいていた(循環思想)
五 調和を大切にし、家族や地域などの集団の存続を重視していた(調和を保つ)
六 精神の自由を尊ぶ気風があった(精神の自由)
七 先祖崇拝や、先人を大切にすることで命や暮らしをつないでいた(先人を大切にする)
八 教育の価値を認め、次世代を愛し育てることに熱心だった(次世代を愛し育てる)

第二章 持続性の知恵を育んだもの

一 学びのなかの持続性の知恵

(1)江戸の学びにみる持続性の知恵
(2)江戸時代の学びの概要
(3)労働の場での学び
(4)地域や家庭での学び

二 風土と暮らしに見る持続性の知恵

(1)日本人の感性や価値観を育んだ風土
(2)風土で育まれてきた日本人の「暮らし」
(3)日本の風土や暮らしに見る持続性の知恵

第二部 伝統的知恵と近代との葛藤

第三章 江戸時代生まれの代表的知識人は西洋文明にどう向き合ったか

一 西洋文明の流入

二 福沢諭吉(一八三五~一九〇一年)の場合

(1)開化期の最も秀でた西洋文明の解説者・導入者
(2)諭吉は西洋文明に何を見たか
(3)なぜ、西洋文明を日本が進むべき文明のモデルとしたのか
(4)日本の伝統的教養の価値をどう評価したか

三 田中正造(一八四一~一九一三年)の場合

(1)封建時代から近代への脱皮に生涯を捧げた男
(2)正造は西洋に何を見たか
(3)正造は伝統的知恵をどう見たか

四 夏目漱石(一八六七~一九一六年)の場合

(1)西洋と日本の違いを問い続けた作家
(2)漱石は西洋文明に何を見たか
(3)漱石は日本の文明開化をどう批判したか
(4)漱石は日本の伝統文化をどう評価していたか

第三部 今こそ知恵を活かした社会へ

第四章 現代に息づく日本の知恵

一 企業経営に生きる先人の知恵
二 もっと早くに真剣に受け止めるべきだった賢人の知恵

第五章 現代に生きる伝統の知恵

一 モノより心

(1)長野県伊那市長谷地区における中尾歌舞伎復活の場合
(2)心の豊かさと不便性の追求―― 森ファームサービスの場合

一 モノより心

(1)長野県伊那市長谷地区における中尾歌舞伎復活の場合
(2)心の豊かさと不便性の追求―― 森ファームサービスの場合

二 自然との共生

(1)コウノトリとともにはばたく豊岡市民の場合
(2)佐渡の伝統的放牧の場合

三 足るを知る

利益より持続性を求める―― 向山塗料の場合

四 循環思想

「循環」の精神と近代技術の結合―― 川崎エコタウンの場合

五 調和を保つ

エコヴィレッジ運動の実践―― 小舟木エコ村プロジェクトの場合

六 精神の自由

からくり技術を現在に活かす―― NECアクセステクニカの場合

七 先人を大切にする

家康公に学ぶコンパクトな街づくり―― 静岡市の場合

八 次世代を愛し育てる

(1)子どもたちの心に「地域への誇り」を耕す―― 伊那市長谷学校給食での地場産物の活用
(2)日立プラントテクノロジーの技能五輪への挑戦

終章 現代に活かす三つのキーワード

心の豊かさ――生きることを楽しむ
つながり――他との関係を取り戻す
理に沿う――地球が有限なことを忘れない