瞬間を制するためのザルと鍋
料理は瞬間を捕える美学である。たった一言「おいしい」のために、この瞬間をいかに捕えるかが鍵となる。
例えば、野菜を茹でるという行為。食べやすくするためだけでなく、アクを抜き、余分な水分を除き、味を吸収させやすくするという重要な役割がある。それが、一瞬を逃すと、色はくすみ、歯ごたえもくたくた。さらには栄養分まで流れ出してしまう。いい事など一つもない。
プロの料理人は、それを極めるために、素材にあわせて塩や酢、米ぬかや重曹、ときには牛乳や大根おろしを使って茹でる。しかし、そのとき、一番重要で難しいのは火の通りの判断。
そして、瞬時にして湯からあげる瞬発力だ。茹で上げた野菜は、火の通りすぎや変色を防ぎ、アクを除くために水に落とす。あるいは、水には落とさず、ザルにあげて水気を切り、余熱を計算しながら冷ます。プロの厨房ならば、それだけのスペースも道具も揃っているが、家庭で本物の茹で加減を求めようとすると、大きな鍋を「えいやっ」と持ちあげ、「あちあち」と慌てながら、ザルに向かって流し込むのが関の山だ。
そこで、ザルをセットした万能鍋の出番となる。
熱回りのいいステンレス(0.8㎜)の両手鍋に、握りやすい木柄付きのザルがセットされている。鍋にザルを入れた状態で茹でれば、タイミングを逃す事なく引き上げることができる。
木柄ザルは、枝豆やほうれん草などの茹であげにぴったり。そのまま水に落としたり、あるいはおか上げするのもスムーズだ。
また細めなので、本格的なだしをとるのに最適。さらに、もっとも時間に神経質なパスタを茹でるにも便利だ。アルデンテはお手の物な上に、ゆで汁を残してあげる事ができるので、ソースと絡めるために別に取り置く必要もない。
もちろん、鍋本来の機能も秀逸だ。本体上部につけた段と曲線を描く構造の合わせ技で吹きこぼれにくく、煮物などにも重宝することは間違いない。しかも、ザルは鍋に収納できてコンパクト。
昆布と鰹節でとった本格だしのひと手間。あるいは、プロ顔負けの歯ごたえのパスタのタイミング。瞬間を制する美学が、この鍋には込められている。
上/茹であげのタイミングを見計らってあげる。木柄の角度が絶妙。
下/ザルごと水に落とせるので、野菜の火が通り過ぎたり、色が落ちてしまったりしない。
上/木柄のザルを使えば、アルデンテの茹で加減もお手の物。素麺や蕎麦にも。