油を制するには、まず道具から
香ばしい匂いに誘われ、ふらりと店に入ると、清潔感漂うカウンター。その中では、油が心地よい音を立て、旬の食材を極上の天ぷらへと仕立てていく。
あの揚げたての旨さをわが家で味わいたい。さくっとした歯ごたえを自ら作り出してみたい。そういう野望を抱く人も多いだろう。天ぷらとは油との阿吽の呼吸。その温度をどう制するかが鍵だ。
古くは屋台で振る舞われ、今や日本を代表するこの揚げ物には、やはりそのための鍋が欲しい。温度計が付いたものやら、揚げ網が付いた鍋やら、いろいろ出回ってはいるが、どちらかといえば、「おいしく」作るというよりは、「簡単に」「失敗なく」作ることを目的としたものが多い。「おいしく」を目指すなら、伝統的な形のものが理想だ。
つまり、鍋底が平らで厚いこと。それは、常に安定した温度を均等にタネにまで伝えるため。油の温度をいかにコントロールできるかがポイントだ。そこで、この鉄の天ぷら鍋。素材は1.6㎜の鉄厚板。熱を蓄える力が強く、高温に上がった油の温度を保つことができる。さらに口の広い形状は、天ぷらを揚げる時に、ネタに含まれる余分な水分を飛ばすにちょうどいい。天ぷらがべたつくのを防いでくれるのだ。
鍋、新鮮な素材ときたところで、もうひとつ注目したいのが衣だ。プロはもちろん天ぷら粉は使わない。薄力粉に冷水で溶いた卵をあわせ、さっくり混ぜ合わせる。小麦粉は混ぜるほどにグルテンの粘りが出やすいから、練ったり、こねたりは決してしない。‥とはわかっていても、家庭用の細い菜箸だと、いつの間にか練り上げてしまうのが辛いところ。そこで、プロが使う水木の太い粉箸がものを言う。天ぷら店のカウンターでよく見かけるこの箸は、花箸とも呼ばれ、衣をさっくり混ぜるためのもの。この箸で粉が残るくらいの加減で作った衣に、旬のネタをさっとくぐらせ、手早く揚げる。理想の天ぷらの出来上がりだ。
関西風なら綿実油で、関東風なら胡麻油をブレンドして、ネタや気分によって工夫してみるのも面白い。また、揚げる側からつまみ、つまむ側から揚げる。ちょっとした元祖屋台の気分を、家庭で味わってみるのも一興かも知れない。
上/衣は太い花箸でさっくり混ぜる。
下/蓄熱性の高い鉄厚板、平らな鍋底、口の広い形状の天ぷら鍋でさくっと揚がった天ぷらを極めたい。
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1.6㎜の鉄厚板で、高い蓄熱性を実現。口が広く、揚げる際に出る水分を飛ばすのに適しています。プロ仕様の粉箸付き。
取り扱い説明書